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ホウ化水素ナノシートにおける層間水素間距離が分子状水素の生成を制御する

  • 研究成果
研究の背景

・水素社会の実現に向け、安全で軽量かつ効率的な水素キャリアが求められています。
・ホウ化水素(HB)ナノシートは、8.5 wt %という高い水素密度を持ち、安全性と軽量性に優れた固体水素キャリアとして注目されています。
・HBナノシートを加熱すると、363 Kから1473 Kの広範囲で水素(H)を放出しますが、特に623 K以下の低温域で見られる多峰性(マルチモーダル)な放出メカニズムの詳細は未解明でした。

研究内容

・低温域での水素放出の原因として、加熱による「局所的な結合様式の変化」か、あるいは「層間の水素間距離(d H⋅⋅⋅H)」のどちらが支配的であるかを検証しました。
・実験的アプローチ: 昇温脱離(TPD)法による動力学解析に加え、高圧水素雰囲気下(最大12 MPa)での加熱実験と赤外分光法(FT-IR)を組み合わせ、水素欠損中の結合状態の安定性を評価しました。
・理論的アプローチ: 4種類の積層構造モデルを想定し、層間の水素原子ペアの距離と数を系統的に算出しました。

主な成果

・低温域での多峰性水素放出は、結合様式の変化ではなく層間の水素間距離(d H⋅⋅⋅H)の分布によって決定されていることを明らかにしました。
・FT-IR測定により、水素が放出されてもB-HおよびB-H-Bの結合様式は維持されることが確認され、結合変化説が否定されました。
・計算された水素間距離の分布が、実験のTPDプロファイル(3つのピーク)と極めて良く一致することを示しました。
・Kissinger解析により、放出ピークごとの活性化エネルギーは同等ですが、反応確率(頻度因子)が水素間距離に依存して異なることが判明しました。

今後の展望

層間の幾何学的配置(積層、ねじれ、歪み、あるいは層間への分子挿入など)を制御することで、水素放出機能を自由に調整・設計できる可能性が示されました。
本知見は、オンデマンドで水素を放出する次世代の二次元水素貯蔵材料の開発に向けた、重要な設計指針となります。


論文タイトル:Interlayer Hydrogen–Hydrogen Spacing Regulates the Formation of Molecular Hydrogen in Hydrogen Boride Nanosheets
掲載誌:ACS Nano
DOI: 10.1021/acsnano.5c20691
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acsnano.5c20691
著者:(筑波大学ホウ化水素研究センター)
大木 理 助教
近藤 剛弘 センター長
濱田 幾太郎 客員准教授

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