会計学は、15世紀末の数学者ルカ・パチョーリによる複式簿記の記述に始まり、発展してきました。しかし、複式簿記の仕訳データは企業などの機密情報であるため、科学的に仕訳データを用いた会計研究を行うことは困難でした。
本研究は、AI技術を用いてもっともらしい疑似仕訳データを生成し、会計学のオープンサイエンス化の基盤を築くことを目指した嚆矢的な試みです。本研究では、変分オートエンコーダ(VAE)を用いて実際の仕訳データを学習し、「借方、貸方、金額」から構成される個別の仕訳は現実のものとは異なるものの、生成される勘定科目や金額の分布など全体としての統計的性質を保持した疑似仕訳データを生成する方法論を提案しています。
また、本研究で提案した方法により生成された疑似仕訳データは、「社会工学コモンズ」にてオープンデータとして公開しています。
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〇社会工学コモンズ
①変分オートエンコーダを使用して素朴に生成した合成仕訳データ(医療分野/診療所)
②変分オートエンコーダを使用して時間的なリアリティを持って生成した合成仕訳データ(医療分野/診療所)
〇 筑波大学データサイエンスケースバンク
変分オートエンコーダを用いた合成仕訳データの生成:会計研究のオープンサイエンス化に向けて
人工知能科学センター(C-AIR)
河又 裕士(人工知能科学センター 研究員)
岡田 幸彦(システム情報系 教授/人工知能科学センター)
【論⽂情報】
掲載誌:Intelligent Systems in Accounting, Finance and Management/32(1), 2025-03
論⽂タイトル:Generating Synthetic Journal-Entry Data Using Variational Autoencoder
著者:Ryoki Motai, Sota Mashiko, Yuji Kawamata, Ryota Shin, Yukihiko Okada
DOI:10.1002/isaf.70005
人工知能科学センター (C-AIR)