ホウ化水素研究センター(HBRC)では、平原佳織教授を講師にお迎えし、下記のとおりセミナーを開催いたします。
関心をお持ちの皆さまのご参加をお待ちしております。
<概要>
- 日時 2025/7/31 15:00-16:00
- 場所 総合研究棟 B204
- 講師 平原 佳織 教授(千葉大学工学研究院物質科学コース)
構造を精密に制御したナノ構造体や1界面レベルの特性解明は、その本質的理解に直結し、微視的な構造特性をマクロスケールの機能材料開発へと橋渡しする役割を果たす。幾何形状に由来するユニークな特性を有するカーボンナノチューブ(CNT)においては、近年ではフィルム状凝集体のデバイス応用に向けた研究が活発に行われているが、個々の CNT 構造の多様さに加え、凝集体中に存在する多様な形態の CNT-CNT 界面により、巨視的な材料の計測評価では発現する特性の支配因子を明確に捉えることが難しい。これに対し、透過電子顕微鏡(TEM)観察下で、単一 CNT、およびCNT の形成する単一のファン・デル・ワールス界面に対して、構造決定と同時に特性評価を行い、それぞれの構造特性を個別に明らかにするうことは、極めて有用なアプローチといえる。
本研究室ではこれまで、TEM 内でプローブマニピュレータを用いて、単一 CNT の形状加工、カイラル構造制御、CNT 接点形成などの構造操作技術を発展させてきた(図)。最近では CNT および配向膜における電気伝導・熱起電力・熱輸送の統一的理解を目指し、CNT1本および単一界面における輸送現象を解き明かすことに取り組んでいる。CNT の熱的・電気的・熱電的特性の相関を単一 CNT レベルで理解した上で、さらに CNT-CNT 間界面の寄与を明らかにすることは、フレキシブル熱電材料としての応用開拓において極めて重要である。これまでの研究では、MEMS 技術を用いて作製した、微小なヒータと電極端子を備えたプローブに CNT を架橋させ、100℃以上の温度差を印加したときの熱流の検出や熱起電力の計測に成功している。また、単一の CNT に対して架橋長を少しずつ変化させながら二端子抵抗計測やジュール加熱時の温度勾配可視化を行い、電気抵抗率や電極-CNT 間の熱的・電気的接触抵抗の評価も行ってきた。さらに、1本の CNT を切断して再度接触させることで様々な形態の界面を形成し、その形状を変化させながら熱起電力や電気抵抗率を計測し、これらに界面が及ぼす影響について直観的な理解も進みつつある。セミナーでは、これらの成果のなかからいくつかを紹介したい。
ホウ化水素研究センター (HBRC)