高等研究院 ホウ化水素研究センターの近藤剛弘センター長、伊藤良一教授、大木理助教らの研究グループは、ホウ化水素(HB)ナノシートの熱および光に対する不安定性という課題を克服する新しい分子設計戦略を開発しました。
本研究では、非光活性分子を層間に導入することで、ホウ化水素ナノ材料の構造安定性を飛躍的に向上させることに成功しました。本成果は、次世代水素材料の実用化に向けた重要な知見を提供するものです。
研究のポイント
- ホウ化水素ナノシートは有望な水素関連材料である一方、熱や光に対して不安定という課題がありました。
- 本研究では、窒素含有芳香族分子であるピラジンを層間に導入する分子設計を採用しました。
- その結果、少量の分子導入にもかかわらず、主たる水素放出温度が大幅に上昇し、熱・光安定性が著しく改善されました。
- 本手法は、ホウ化水素に限らず、他の層状ナノ材料にも応用可能な汎用的設計指針を示しています。
社会的意義・今後の展望
本成果は、水素エネルギーキャリアや機能性ナノ材料として期待されるホウ化水素材料の信頼性を高め、実用化に向けた大きな前進となります。今後は、さらなる安定性向上や機能拡張を目指し、応用展開が期待されます。
論文情報
- 掲載誌:Small
- 論文タイトル:
Enhancing the Thermal and Photo Stability of Hydrogen Boride Nanosheets by Intercalation of Non-Photoactive Molecules - DOI:10.1002/smll.202506230
- URL:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/smll.202506230
- 著者:
伊藤良一 筑波大学数理物質系教授
大木 理 筑波大学数理物質系助教
近藤剛弘 筑波大学数理物質系教授 ほか
