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医療データの機密性を克服し組織の壁を越えて連合分析する新しい因果推論手法

  • 研究成果

ランダム化比較試験(RCT)が実施不可能な場合、観察データを用いて因果推論を行う統計手法があります。しかし、複数の組織間で機密性の高い個人データを集めることは、重大なプライバシー問題を抱えます。データコラボレーション準実験(DC-QE)フレームワークは、個人の検診データの代わりに次元圧縮した「中間表現」を共有することで、機密性の問題に対処します。

本研究では、筑波大学附属病院の検診データを仮想的に複数病院の状況を想定して分割し、DC-QEフレームワークを適用し、因果効果推計の精度を実験しました。実験結果は、仮想の複数病院を連合分析するDC-QEが、単一病院を想定した個別分析を一貫して上回り、生データをそのまま集められた場合に実行可能な集中分析の精度に近づくことを示しました。特に、それぞれの病院でデータの分布等が異なるnon-IID環境で有効となることがわかりました。この実験結果は、生データを共有せずに機密性を守って連合分析する統計的因果推論の新たな手法が、医療分野で大いに適用可能であることを示しています。今後は、この手法の国内複数病院での実証実験や、海外の病院との実証実験を行う計画です。

計算科学研究センター
河又 裕士(人工知能科学センター 研究員)
今倉 暁(システム情報系 准教授)
櫻井 鉄也(システム情報系 教授)
岡田 幸彦(システム情報系 教授)

【論⽂情報】
掲載誌:Scientific Reports volume 15, Article number: 9827 (2025)
論⽂タイトル:Data collaboration for causal inference from limited medical testing and medication data
著者:Tomoru Nakayama, Yuji Kawamata, Akihiro Toyoda, Akira Imakura, Rina Kagawa, Masaru Sanuki, Ryoya Tsunoda, Kunihiro Yamagata, Tetsuya Sakurai & Yukihiko Okada
DOI:10.1038/s41598-025-93509-0

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